<知事就任5期目4年目・井戸敏三知事に聞く>
ポストコロナへ“2030年の展望”具体化
兵庫ジャーナル 2020.08.17wrote

  井戸敏三知事が8月1日で知事就任20年目、5期目4年目を迎えた。井戸知事は、新型コロナウイルス対策の推進を第1に、ポストコロナ社会に向けた情報化、グローバル化、そして、地域の活性化を課題としてあげ、今期残り1年、「兵庫の未来への道筋をつくる」と表明している。そこで改めて井戸知事にインタビューし、抱負と決意を聞いた。

 

 ―5期目4年目、20年目を迎えられました。あっという間のようにも思いますが、知事の心境をお聞かせください。
 井戸知事 それぞれの期に、それぞれに相応しい課題があった。過ぎ去りながら、それぞれの期の課題の解決にあたってきた、という思い。
 今期は県政150年の大きな節目で、どう迎えるかが重要な課題だった。式典と合わせて、2030年の展望をまとめ、県民に将来像を示すことに意義があったと感じている。
 そして震災25年、行財政構造改革の完成。今後10年間は、震災による県債が残っているし、行革債などの償還もあるので、厳しい枠組みの中で財政運営をせざるを得ない状況。
 しかし、その一方で湾岸道路西伸部や山陰近畿自動車道、県庁舎の建替、但馬空港のあり方、播磨臨海道路など大きなプロジェクトが続く。これにしっかり対応しなければならない。百年の大計を間違わないよう、県民とよく相談しながら進めていきたい。
 ―7月27日の会見で行革の達成は「兵庫発展の基盤づくりの完成」と話されていましたが。
 井戸知事 ある意味で推進基盤はできたが、例えば高速道路ネットワークが全てつながっている訳ではない。これを完成させるなど、残された課題の道筋を立てていくことが重要だと考えている。
 ―そして、新型コロナウイルスですが。
 井戸知事 コロナの対策は相当見えてきたところがある。例えば、今回の第二波と呼ばれているような要因は、東京が震源地で、それが交流圏である大阪に伝播し、兵庫に伝播した。最初に伝播させた人たちが兵庫の中で家族や同僚、会食などで広げているので、そこから外に広がり第三波にならないようにしていく。三次感染を防ぐことが重要といえる。クラスターもぽつぽつ発生しているが、これは大阪での会食が多いため。その意味で感染経路を相当追えていると理解している。そういう状況だからこそ、濃厚接触者や関係者を早く確定し、PCR検査を行い、それ以上の感染を防ぐようにしている。
 ―コロナ対策においても兵庫らしい取り組みが見受けられました。
 井戸知事 本来は対策を議論しなければならない。何人発症したかの発表は県民への警鐘になるが、そのこと自体が問われるものではない。どう対応するかが基本になる。どういう経路で発症したかを手繰るよりは、その人から次に感染させないことを基本に対策を行うべきだと考えている。
 病院の体制では、すでに650の病床を確保している。施設療養のホテルなどについても500室は確保し、700室の目処は立っている。これによって毎日80人の発症が1カ月続いても対応できる。病床についての心配は今のところない。まさに「安心してください」と言うことができる。在宅療養を最初から行うのは良くない。病院で診断してから判断する。60歳以上の方は施設療養ではなく、入院してもらうことにしている。こういう原則を立てて対策を行っていることが、兵庫の特色の一つ。
 ―新たな生活様式「ひょうごスタイル」の中で、自然災害と感染症との「複合災害」への備えも打ち出しています。
 井戸知事 県民に要望するものではなくて、防災関係者に「ひょうごスタイル」の一環としてやりましょう、という呼びかけ。要は避難所で社会的ディスタンスをしっかり取ろうというもの。兵庫らしさを出すという意味でも、あえて複合災害対策を盛り込んだ。
 ―これと関連して7月の九州南部豪雨では、熊本県外の災害支援ボランティアが被災地で活動できていない状況が続いています。ボランタリープラザの高橋守雄所長は事前にPCR検査を受けることを提案されていますが。
 井戸知事 ボランティアのPCR検査は、「やろうよ」と言っている。行く側も現地できちんと活動できるし、受け入れ側も安心できる。そのような体制をつくった方がいいと考えている。1カ月が経過したが、泥出しが終わっていないところが沢山あると聞いている。これは人手がなければできない。このためボランティアの絶対量が必要。その意味でも全国からの応援を早く受け入れる体制づくりが求められる。その一つとしてPCR検査を受けた上で、応援にいくことは有力な手段と思っている。
 ―ポストコロナ社会に向けた取り組みも始まっています。
 井戸知事 コロナ対策の社会貢献事例・アイデア募集や、ポストコロナ社会の具体化に向けた補助制度の創設などを進めてきた。五百旗頭真県立大学理事長を座長とする県ゆかりの12人によるポストコロナ社会兵庫会議からの提言も受けた。夢物語的な提言ではなくて、現実を踏まえた上で次なる時代に備えた必要な対応がまとめられている。2030年の展望で描いた兵庫と重なるところが多いと思っている。兵庫会議の提言を生かす意味からも2030の展望のプロジェクト化を急ぎ、具体化することが、今後の県政の一つの柱になる。来年度の策定をめざしている新しい長期ビジョンにも反映させたい。
 兵庫会議の提言は「人間の安全保障」で結ばれている。どんな社会でも人が中心で、人の生き様をどのように展開するかが問われる。それを兵庫という舞台で実現していくには、その歴史や文化を踏まえながら新しい創造性を加えていく。「現実でありながら現実を超える」という姿勢を提言で強調されていると感じている。しっかりと受け止め、新しい政策に生かしたい。
 ―コロナを機に東京一極集中の是正、地方分散型社会への流れが進むことが期待されます。
 井戸知事 3密を避けるということは、一極集中を避けるということ。3密を避けて田舎暮らしをしたい人が随分出てきている。丹波や但馬、中播磨で聞いても移住の相談が昨年より3倍から5倍多いという。今まで地方の良さを一生懸命売り込み、移住を働きかけてきたが、今回のコロナで社会全体の動きとして出てきていることは歓迎すべき。丹波市では、不動産屋が手持ちの手頃な民家が売れて在庫がない、というほどニーズが出てきている。
 これを地域創生につなげるためには、情報基盤の整備が必要だと考えている。これによって情報活用型企業も立地できるし、ITビジネスのベンチャーも立地しやすい。県では「ひょうご情報ハイウェイ」を整備し、これが大きく機能している。この増強や情報インフラを活用したスタートアップの応援システムなど、兵庫・神戸から全人類の幸せのための活動を、しやすい環境整備をさらに進めたい。

 ―連合長を務めておられる関西広域連合も12月で10周年を迎えます。
 井戸知事 そもそも関西広域連合の活動が行われてきたこと自体が、地方自治や地方分権に画期的なこと。ドクターヘリや災害支援などで存在感は示せたが、国からの事務移譲が進んでいない。分権はこちら側から一生懸命持ち出したからといって、国がその気にならないとできない。国の機関の地方移転については、関西広域連合の構成府県だけにしか実現できていない。文化庁は京都、統計局の和歌山、消費者庁の徳島といったように。それなりに効果は上げているが、国家機関の地方分散で、権限が移った訳ではない。その意味で権能を移す地方分権をどう展開するかが、相変わらず問われている。大きな宿題だと思っている。
 ―県議会との関係について伺います。コロナ対策では県当局に対して、休業支援金の対象拡大など活発な要請活動をされ、議会の存在感を一層発揮されていると感じていますが。
 井戸知事 議会各会派から多くの申し入れ・要望をいただいた。これらを踏まえ、検討すべき対策について5回の補正予算を編成し、機動的な対応を図ってきた。この補正予算の編成にあたっては、定例会はもとより、2度の臨時議会を開催し、議論を積み重ねた。県民あげての対策に専決処分で知事だけで行うのはどうだろうか、という思いもあるので臨時議会の開催で議会の協力を得ている。議会側からは、協力することは協力し、推進していく基本姿勢を持っていただいている。議会と知事部局は二元代表制のせめぎあいと協力で、県民の正しい意見、声を現実化していかなければならない。程よい緊張と程よい協力が重要だと考えている。
 ―市町との協働については。
 井戸知事 感染症対策をはじめ広域的な課題に迅速に対応するためには、県と市町が適切な役割分担のもと、同じ方向を向いて連携・協力することが必要である。県は補完機能や広域調整機能を発揮するだけでなく、市町間の連携も支援していくことが重要となる。
 ―職員の方へのメッセージをお願いいたします。
 井戸知事 今はコロナが第一になっているが、県政はコロナだけではない。コロナはもとより、例えば長期ビジョンの検討や高齢化に伴う福祉の準備、社会資本整備の推進、ポストコロナ社会を睨んだ産業振興のあり方とか、基幹産業であり地域を支える意味での農林水産業の推進、教育は高等学校の特色化がかなり進んでおり、これをもっと進めるためにはどうすべきか、といった課題がある。この課題に向かって職員がしっかり取り組むことが、県民の期待に応える県政につながる。県民本位、現場主義、生活重視の基本姿勢を徹底し、従来の発想にとらわれない積極的な発想や行動を期待する。がんばってもらいたい。
 ―7月27日の会見で「残る任期1年、一生懸命がんばる」と述べられました。
 井戸知事 これが県民の負託に応える基本。
 ―兵庫県の未来を考えると、心の豊かさや生活の質を追求する県政の歴史と伝統、そして参画と協働の基本姿勢を継承していくべきだと思いますが。
 井戸知事 新しい知事が生まれるのなら、新しい知事が自分なりに過去の県政のいい面、悪い面を評価して、継承すべきは継承すべきだし、変えるべきことは変えるべき。私自身としても毎期ごとに検証してきた。前期でやり残したことは当然やるけれど、今期でやるべきことをどのようにクリアしながら取り組むかを考えてきた。しかし、私まだ、辞めるとは言ってませんけどね。
 ―ワールドマスターズゲームズ2021関西の出場に向けた水泳の練習は。
 井戸知事 コロナでプール通いは中断していたが、再開したい。一度中断すると、始めにくい。しかし、今月からがんばりたい。
 ―さわやか街頭トークも100回まであと12回ですが。
 井戸知事 これも再開しないといけない。毎月やらないと100回を達成できない。月1回を基本に2回やる時もあることにし、30分もやらずに15分の時もある。そのようなやり方もできるのでは。街頭トークを一生懸命やっていると6期目も出ると誤解を受けるかもしれないが、目標達成をめざしたい。