<音楽は生! 演奏会復活へ一歩踏み出す>
コロナから心の元気回復
兵庫ジャーナル 2020.06.25wrote

 新型コロナウイルス感染防止のため発令されていた都道府県をまたぐ移動自粛要請が解除され、兵庫県の観光地や繁華街でも賑わいが戻りつつある。中止されていた公演や展覧会なども感染防止対策を取り、再開に向けて動き始めた。芸術文化による「心のV字回復」が期待される。
 “芸術文化立県”をめざし、さまざまな事業を展開する県芸術文化協会では、毎月実施してきた県民会館(神戸市中央区)でのロビーコンサートを13日、4カ月ぶりに開催。同協会が管理運営する県立芸術文化センター(西宮市高松町)も19日、公演再開に向けたデモ演奏を兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)が披露した。
 同協会の山本亮三理事長は「阪神・淡路大震災で芸術文化の持つ力の大きさを経験した。その教訓を生かして守るところは守り、トライするところはトライする。ウィズコロナ社会の中、元気回復をめざし、芸術文化の力を発揮させたい」と話している。

 13日午後の県民会館ロビーコンサートでは、姫路市出身のピアニスト・山中歩夢さんが出演、華麗で幻想的な『パガニーニ大練習曲』第3番ラ・カンパネラなど4曲を奏でて会場を魅了した。
 同コンサートは新進・若手アーティストが活躍する舞台として、平成18年から毎月実施してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止で今年2月の公演を最後に開催を見合わせていた。
 今回、非常事態宣言が解除されたことで再開の運びに。通常は56席あるソファーを25席分にして間隔を開け、周囲にイスを並べて延べ60席分を確保した。
 また、会場は十分に換気し、鑑賞者にはマスク着用や検温、消毒などを求めたほか、スタッフはフェイスシールドやマスク、手袋を着用して感染防止対策を徹底。出演者もトーク場面ではフェイスシールドを使った。
 担当職員によると、当日の鑑賞者は約40人。再開を心待ちにしていたファンや、過去の公演にずっと足を運んでいるリピーターの姿も多く見られ、会場は感慨深い雰囲気に。
 山中さんは、「久しぶりの演奏。コロナ禍の時期に発表できたことがうれしく、感謝しています」と話していた。
 このほか27日には、中国琵琶奏者のエンキさんによるコンサートを開催。7月11日には泉麻衣子さんのピアノ演奏、8月8日は久津那綾香さんによるヴァイオリン演奏が披露される予定。
 問い合わせは同協会事業第2課(?078・321・2002)。

 19日午後に開かれた県立芸術文化センターのオーケストラ公演の再開に向けたデモ演奏では、劇場関係者と報道関係者が来場したほか、ライブ配信で広く発信された。
 同センターは、緊急事態宣言を受け4月7日から休館していた。その間も、PACオケのメンバーと動画上で共演できる「すみれの花咲く頃プロジェクト」や、近隣の商店街などに佐渡裕同センター芸術監督のメッセージポスターを掲げるなどして、「心のビタミン」を届け続けた。
 藤村順一副館長は「震災復興をめざして立ち上がり、どんな時も前向きに歩んで来たが、今回ばかりは躊躇した。そんな中、スタッフから多くの企画提案があり、実践しながら少しづつ前進してきた」と振り返る。
 6月2日の開館以降、公演の再開に向けた取り組みが進められている。
 開会あいさつで、佐渡監督は「人々に芸術文化の喜びを伝えることがこのセンターの使命。今日はその再開への第一歩」と開催意義を伝えた。
 続いて、6月のPAC定期演奏会で指揮をする予定だった、広島交響楽団音楽総監督の下野竜也さんと対談。
 音楽界のコロナの影響について佐渡監督は、感染への不安を感じながらの生活やソーシャルディスタンスの確保など社会の変化にふれ、「多くの人と音と感動を創る音楽の醍醐味とは正反対」と再開の難しさを説き、下野さんは「非常時における芸術文化の意義について考えさせられた」と振り返った。
 一方、両者とも音楽への熱意を再認識する機会ともなったことを明かし、国内外で公演再開に向けた実験が進められていることが伝えられた。
 この日も、奏者間に仕切りや約2mの間隔を設けるなど対策を実施。佐渡監督は「音を聞き合ったり感じ合ったりできない」と肩を落としつつ、「それでも一歩を踏み出すべき」と音楽家に今、求められている姿勢を示した。
 最後に、下野さんは「当面は考え得る最大限の対策が不可欠だが、方法論の開拓に終始すべきではない」とあくまでも、本来の姿での再開をめざす大切さを唱えた。
 続いて、佐渡、下野両氏の指揮で、PACメンバーがベートーヴェンの「コリオラン序曲」など計3曲を演奏。演奏後の感想では、「周りの音がほとんど聞こえない。これまで以上に視覚に頼らないといけない」など難しさのほか、「課題もあるが、配置を変えることで改善できるのではと感じた」と前向きな意見も。
 下野さんは「大きな一歩」と手応えを語り、佐渡監督は「やはり生演奏はいい。これからも、心のビタミンをどんな時も届けていく」と決意を新たにし、ガッツポーズで壇上をあとにした。
 また、イベント後の記者会見で、佐渡監督は「劇場とオケが一体となったこのセンターだからこそできることがある」とさらなる挑戦を誓った。

 山本理事長は、「いろんな制約がある中で、何ができるか考え対応した。音楽は生演奏が一番。両公演とも鑑賞された方から『良かった』と言っていただいたし、演奏者も生で聴いてもらい喜んでいた」と胸をなでおろした様子。
 そして、「若手アーティストの演奏機会の提供など、さらに取り組んでいく。今後も“トライやる”を次々と重ねたい」と意気込んでいた。