<就任5期目3年目を迎えて・井戸敏三知事に聞く>
魅力、資源生かし「すこやか兵庫」拓く
兵庫ジャーナル 2019.08.11wrote

 平成29年7月、第52代兵庫県知事に就いた井戸敏三知事が、8月1日、就任5期目3年目を迎えた。令和の幕開けから3カ月、時代潮流の転換期を見据え、「五国の多彩な魅力や資源を生かし、県民とともに『すこやか兵庫』をつくる」と宣言した。就任以来、基本姿勢である「参画と協働」を堅持しつつ、ポスト県政150周年のスタートと位置づけ、令和の課題の解決へ柔軟に且つ積極的に挑戦していくことを打ち出した。折り返しを過ぎ、“今後”へ注視が集まる。そこで井戸敏三知事にインタビューし、改めて抱負と心境を聞いてみた。
 ―県政150周年を終えて5期目3年目です。今の心境は。
 知事 令和の課題は平成の課題。デフレ経済からの脱却、大規模自然災害への対応、人口減・少子高齢社会の到来、東京一極集中の是正に対応しながら、経済社会の高度情報化、県民生活の質の向上、交流・環流の促進などに取り組む。
 5期目のスタートは、県政150周年の節目をどう迎えるのかが、課題だった。1300を超える事業を県民との協働という形で展開、未来への発信ができた。併せて兵庫2030年の展望として望ましい姿を11のフェーズに分けて提示した。この実現に向けて、今年度は、展望の具体化を図るスタートの年に位置づけたい。
 ―「前例にとらわれない発想」と強調されていますね。
 知事 時代の転換期だからこそ、県民の創意工夫や参画と協働のもと前例にとらわれない積極的な発想で課題に立ち向かい、行動してもらいたい。私自身もそうかも知れないが、知らない枠組みを自らに当てはめてしまっている恐れがある。課題解決をしようとした時に、制度の枠組みからアプローチするのはいかがか、という意味。解決に向けてどのような対応をするかに重点を置こうということ。実現の可能性を初めに考えるのではなく、どういうアプローチが望ましいかということに判断の基準を置こうという呼びかけである。
 ―「活力あるふるさと兵庫実現プログラム」で数値目標90%以上達成の事業は約82%ですが。
 知事 公約を事業評価するためにプログラム化している。二重マルとマルが付いていても威張れるようなものではない。逆に目標の70%未満達成の事業で実現できていれば威張れるものはある。例えば人口減の歯止めがその一つだ。
 ―人口減に効果的な処方箋は、ありますか。
 知事 ない。人口減は日本全体の課題だが、やはり兵庫に対する思い入れと、兵庫で生活することが豊かな生活が送れるという、この2つが実現できる環境整備をしていかなければならない。
 ―兵庫2030年の展望のリーディングプロジェクトの進行状況は。
 知事 将来像の具体化へその推進を急ぐことが必要。各部局で議論しているが、予算要求のようなプロジェクトや抽象的な事業であったり、これからブラッシュアップしていかなければならない。
 ―県庁周辺再整備については。
 知事 まずは、老朽化し安全基準を満たしていない県庁舎の整備。周辺は、その次。周辺にも調和したプロジェクトを進めるということ。
 今、3社から提案を受けており、8月中にパートナーを決めたい。委員会で議論、ヒアリングを行い、方向づけを踏まえて県としての方針を決めたい。
 ―世界ブランドのホテル誘致については。
 知事 今回の提案には入れようがない。県庁舎とホテルや事務所など多目的、複合的利用施設をどう配置するか、県民会館の取り扱いなど物理的配置計画が今の段階では中心となる。
 ―来年で阪神・淡路大震災から25年。平成8年に兵庫県に赴任されて以来、これまでを振り返ると。
 知事 ガレキの街からよくここまで来たとの思いは全ての人に共通する。これまでは未来への投資ができずに生活の復旧復興が中心だった。ようやく未来を臨んで、計画的に進める状況になりつつある。
 一方で阪神・淡路の経験が風化しつつある。24歳までの若者が全人口に占める割合は、22・5%。どんな形で原点に返り今後に備えるか、共通認識を県民に持ってもらう必要がある。このため、「忘れない」「伝える」と経験、教訓を「活かす」、そして南海トラフ地震に「備える」の4つのテーマを掲げて、来年の1・17を迎えたい。 
 何より災害弱者対策が十分とはいえない。誰がいつ、どこへ、どのような方法で避難をするのか、個別の計画を十分にもっていなかった。兵庫県ですら10%弱。これには愕然とした。100%は難しくても早急に70、80%にしていかなければ。計画を作るだけでなく、訓練が不可欠。地域住民を巻き込んだ防災訓練を積み重ねていく必要がある。それに専門家や防災士、自治会などが参加していくことを考えなければならない。
 ―震災後に入庁した県職員が、すでに中堅になっています。
 知事 平成7年以降の入庁者は、県で48・4%、神戸市で56・5%。県は震災後も水害に遭ってきたので、職員のリスク対応は磨かれている。加えて水害からの復旧復興に関連事業も上乗せしており、県内の河川の安全度は相当上っている。
 昨年の7月豪雨で土砂崩れはあったが、河川が危険な状況にほとんどならなかった。流量を増やすための土砂掘削と河川拡幅が効いた。円山川や千種川、加古川などで河川事業などの抜本対策が機能している。
 ―大規模地震等への備えについては。
 知事 家具の位置を点検して、倒れてきても大丈夫な場所で眠るといった安全な生活空間の確保が大切。人と防災未来センターの河田惠昭センター長によると、直下型地震の揺れは20秒程度だが、南海トラフのようなプレート型は1分以上揺れる。そうすると家具の固定力がもたないことがある。家具が倒れても自分たちの生活空間は安全なんだというチェックをしてほしい。

―地方分権改革に向けて、考えは。
 知事 今のやり方は、地方でやる方が国でやるより効率的という話。効率で事務の配分を決めても、これは分権ではない。分権は、どういうような日本全体の仕事のやり方がいいのかという話で、国か地方か、どちらでやるのがいいのか、そのような評価からこないといけない。今のやり方では限度がある。
 市町との連携では、県・市町懇話会、地域づくり懇話会、また、中核市とは幹部連絡会議、神戸市とは自治法の改正を受けて、調整会議を設置しており一層の連携を図る。市町へは、県独自の権限移譲をさらに進める。
 ―関西広域連合については。
 知事 広域行政のあり方検討会の報告は、国に対して「よこせ、よこせ」ではなく、国と「一緒にやりましょう」という提案。例えば、広域連合委員会に国の出先機関の職員に入ってもらうとか、国が単独で行っている事務に連合も加わることなど、現実的なことも盛り込まれている。
 もう一つは、7つの広域事務以外に追加する事務を検討するべきとしている。農業技術センターや工業技術センターとかの試験場などについて。ところが広域連合で引き取ると役割分担の議論が必要。大阪の工業技術センターは創薬とすると、県では先端技術の航空機関係といった風に分けることができればいいが、サプライチェーンは広がっているので役割分担はなかなかできない。重点化すると、どうメリットが出せるのかが、ポイントになる。
 ―防災庁の創設については。
 知事 政権側に拒否反応がある。事前防災の重要性を訴えている。事前対策から復興までの総合的な施策を推進する高い専門性を有する組織であることをさらに強調していきたい。
 ―統一地方選、参院選を終えました。
 知事 投票率が低いのを何とかしなければならない。参院選で5割を切ったのは問題。統一地方選も落ちている。投票所の数は横ばい。従って若い人の投票率が悪い。原因を分析して投票参加事業をやっていかなければならない。
 もう一つは、維新のブーム。維新のブームなのか、政権党に対する飽き足らなさなのか、どちらかと考えると後者の方が強いのでは。そこで受け皿として立憲民主までいかずに維新にいっている現象ではないか。
 ―県議会などでは与野党というのは当てはまらないと思いますが、対議会との関係は。
 知事 統一地方選のあと自民党が過半数に少し足りない状況だったが、正副議長選などを経て従来の枠組みが維持されている。これを大事にし、認識共有をしっかりしていく必要があると思っている。
 ―職員へのメッセージを。
 知事 新時代への期待が高まっている中で、変化を見通す構想力・企画力、ニーズを的確にキャッチする現場力、そして創意工夫で課題を乗り越える実行力を発揮してほしい。今の兵庫県が当面している課題は何なのか自分自身で発見する。課題発見能力を鍛えて欲しい。何が課題か明確にできれば対応の仕方は見えてくる。従来発想では限界がある、これがまさに課題だと思う。
 ―さわやか街頭トークの目標100回に向けては。
 知事 あと2年しかないから相当がんばらないといけない。涼しくなる秋に再開したい。
 ―健康管理は。
 知事 朝のストレッチは続けている。やりたくない日もあるが、無理してでもがんばっている。
 ―祝賀会などで名前を詠み込んだ歌を作られていますが。
 知事 折句というが、もう2千句ぐらいになっている。コツはないが、言葉の語彙をどれだけよく知っているか。辞書を見ないで作ることにしている。頭の中で言葉を選び詠むことを心がけている。いい言葉が出てくる時とそうではないことがある。例えば「ん」がついている場合は、言葉を見つけ、選ぶのが難しい。
 ―あと2年で任期満了です。そのあとは。
 知事 いずれにしても兵庫から出ていく訳ではないし、元知事としてがんばらないといけない。その時に考えたい。今いえることは任期期間中、しっかり自分なりの課題に対して尽力していくこと。