<知事就任5期目2年目・井戸敏三知事に聞く>
転換期に臨む「新たな発想と方途」
兵庫ジャーナル 2018.07.24wrote

 井戸敏三知事が、8月1日、知事就任5期目2年目を印した。県政150周年記念式典では、銘すべき節目を“第2の開国”と位置づけ「新たな課題に新たな発想で対応」を強調した。「未来は創るもの」と勇して当たる姿勢を標榜したうえで新時代の目標を「すこやか兵庫」の実現とし、五国の多様性を活かしたふるさとづくりを打ち出した。関西広域連合の連合長として2府6県4政令市を率い、地方分権の求道者たる一面ものぞかせる。そこで井戸敏三知事に、参画と協働の松明を手に新兵庫づくりにかける思いを聞いてみた。

「すこやか」―兵庫らしくマッチ

 ―知事就任5期目2年目を迎えました。感想をお聞かせください。
 知事 時代の転換期で不安感が漂っている。少子高齢化、IT革命などが大きな変化をもたらすだけに、新たな発想と方途が求められている。
 ―「新たな発想と方途」、その意図は。
 知事 150周年なので明治維新になぞらえた。旧来のやり方では植民地化の流れに対抗できない。幕藩体制から天皇を戴く天皇主権体制に変えていこうというのが明治維新の本質。それから150年。今、まさに新しい対応を迫られている。
 理由は人口減少と少子高齢化。日本全体の問題だが、日本の縮図である兵庫はその傾向が強く、象徴的に減少化している。維新に準じた対策をみんなで考えていく必要がある。
 ―AI、IoTの発展が暮らしや働き方に変化をもたらすといわれていますが。
 知事 AI、IoTは、供給力を増す対策には役立つが、需要をどう増してくれるのか、ということをしっかり考えないといけない。その方策は2つ。世界の人口増や経済成長をにらんで、世界の成長を取り込むのがひとつの道。もうひとつは人口が減った分に見合うだけ外から来てもらう人を増やす道。例えば定住人口が1人減ったら、訪問者を365人増やせばいい。1日に使うお金も定住人口より、訪問者の方が多い。地域活力の増進には訪問者を増やすことが大きな戦略で、観光戦略は非常に重要になる。
 加えて専門職大学の検討や地域特性を生かす施策展開もこれにつながる。域内の充実を図るには、域外との関係強化を常に念頭に置かないといけない。
 ―参画と協働の基本理念をベースにして「県民総参加」がキーワードになっています。
 知事 参画と協働は大震災から生まれた兵庫の県民運動のひとつ。宛がいぶちで発展を期待する時代ではない。兵庫県は大震災でマイナスからのスタート。これを元に戻してプラスに転じたのが創造的復興の基本。だから当事者が歯を食いしばる必要があった。その意味で参画と協働は不可欠だった。
 特に、地域の活力が問題。高齢者、子育て環境、障害者といった福祉サイドの充実を急ぐ必要がある。2025年問題の解決、その他の分野でもポテンシャルを生かさなければいけない。
 ―県政150周年記念式典について印象は。
 知事 小中高校生に未来にかける思いを発表してもらったことが嬉しかった。武庫川女子大学附属中学校コーラス部の合唱も綺麗だった。小学生の作文では、「兵庫の未来は希望に満ちあふれている」との言葉には感動した。小学生が身近な生活圏の変化について取り上げており、非常に有意義だったと思う。
 佐渡裕さんの指揮による記念演奏、オペラ「魔弾の射手」の序曲は力強くていい励ましをいただいた。五百旗頭真先生の記念講演は、県政の50年間を振り返り、兵庫の立ち位置を明確にし、特質を分析的に話された。新しい50年へのスタート基盤が明瞭になり意義深かった。
 ―県民提案の記念事業の展開状況をご覧になっていかがですか。
 知事 夏休みに入ってとても事業が増えた。子どもたちと一緒に地域で諸行事をやろうとの計画だろう。従来の事業に150年という節目の思いを上乗せする内容が多い。150年を考える契機になっており、県民の参加という意味で評価したい。  
 ―県庁周辺地域の再整備構想を明らかにされました。
 知事 1、2号館を建て替え、県民会館の移築とともに元町山手地区の再整備に着手する。有識者委員会を立ち上げ、11月には基本構想を策定する。1号館の耐震度がこれほど低いとは思わなかった。基準が変わったことがあるが、国交省の庁舎耐震度は0・9以上。0・6以上が破壊されない水準。いざという時に司令塔となる庁舎は0・9以上。それが0・3、数値に驚いた。
 ―県庁周辺再整備は、三宮再整備と肩を並べる規模になるのでは。
 知事 庁舎の再編と跡地に民間ベースの高層ビルをつくってもらうという話。元町北側もJRが駅ビルを建設するなら大プロジェクトになる。ねらいとしてはJR元町駅からの利便性を高めることにある。
 ―兵庫2030年の展望で「すこやか兵庫」を掲げています。この意味合いと狙いは。
 知事 田辺園田女子大名誉教授も、五国それぞれの言葉はあっても兵庫をひとつに表わす言葉はなく、兵庫全体の理念を説明することは難しいといわれている。従来から考えてきたが、「すこやか」という言葉は非常に兵庫らしくマッチする。
 5つの地域がポテンシャルを活かしながら健全に育っていくとの意味。生活がすこやかというと、地域に活気があるだけではなく、住んでいる人々の生活が円滑に行われている。すこやかな人というと、健康に加えて人の心もそうだし、お金持ちではなくてもそれなりの生活を営める。産業でいえば最先端から一次産業の農業まで健全な発展、役割を果たしているというイメージ。ようやく兵庫の将来を一言でいう言葉を提示できた。
 2030年の展望で掲げる「未来の活力」の創出、「暮らしの質」の追求、「ダイナミックな交流・還流」の拡大の3つの基本方針を踏まえて「すこやか兵庫」の実現をめざす。   
 ―行革について一言。
 知事 見通しができたという訳ではない。世界経済は不安だし、消費税を上げた後の経済への影響も懸念される。経済状況の不安さが現実化すると、辛うじての収支均衡だから、また沈むかもしれない。だからこそ逆に沈まないようなフレームを前提にした財政運営をできるようにする。勝手なことを予算編成当局にやらさないような枠組みを提示することが重要だ。
 ―新しい枠組みについては議会からも県民総参加の注文がありました。
 知事 県民の代表としての議会と個別政策については協議しながら積み上げていく。県民レベルではトータルで判断できることが大事。
 ―地域創生に関連して神戸市との連携は。
 知事 三宮の再開発は神戸市が主体だが、枠組みの中で県としてできることを協力する。サンパルビルの企業庁出資を続ける。特に起業プラザは満杯で意欲的な若者に使われており、起業に結びつく対応が重要。また、谷上プロジェクトはIT拠点都市へ、神戸医療産業都市を健康版シリコンバレーとして育てたい。
 ―他の市町では地域創生交付金の対象171事業が決定されました。
 知事 基本的に市町単独事業であり、自らの地域おこし・振興をめざした諸事業への取り組みにつながった。それを県として支援する。例えば姫路などは、港関係の整備を急ぎ、海の活用を観光面からともに考えたい。
 ―先日の豪雨では河川合流部の対策が効果を発揮したと聞いています。
 知事 特に、稲葉川で効果を発揮し、逆流現象がほとんど起きなかった。平成16年台風23号以降の整備が効いている。円山川、洲本川もそう。千種川は平成21年の台風9号被害で上中流部の対策も必要だと教えられた。以降、上中流部対策を5箇年計画で進めており効果があった。武庫川についても河床掘削、河道拡幅工事の成果があった。
 ―大阪北部地震、豪雨の際に職員の通勤確保対策が問題となりました。
 知事 交通機関が一斉に止まることは想定していなかった。豪雨では、明石海峡大橋と大鳴門橋が通行止、淡路島も2日間通れなかった。しかし、橋は雨に対してはそんなに弱いはずがない。雨に対しては、陸上部と橋の基準を別にすることをNEXCO西日本社長に口頭で申し入れた。
 ―関西広域連合に関して、12月に連合長の任期を迎えます。併せて防災庁の見通しは。
 知事 連合長ポストは、何方かにバトンタッチしたい。防災庁はなかなか難しい。しかし、防災関連の組織が分かれている。典型的なのは気象庁。もともと運輸省の管轄で、鉄道や車、船にしても気象が重要なためで、それを引きずって国交省にある。今は災害への予測機能が重要性を増しており、交通機関よりは、地域災害に対する予測が重要だ。災害関連の部署を統一した方がいい。
 ―職員に対してメッセージをお願いします。
 知事 新規採用職員には、実質的な公平性、広域と狭域の課題の見極めを強調し、そして所属長会議で幹部職員には、プラスアルファの発想が必要といった。これをトータルすると、思い込むなということ。現場の要請に対して柔軟に対応する。制度にとらわれがちだが、制度は実情に合わなければ変えていけばいい。現場の要請に対して柔軟に発想し行動していこうと呼びかけた。特に150年ということも強調させてもらった。
 ―所属長会議の際に新しい課題へのアプローチを宿題として今年度中の回答を求めましたが。
 知事 回答はまだ返ってきていない。お盆過ぎから来年度の重要事項についてのヒアリングが始まるので、その中でぼちぼち戻ってくるのではと期待している。
 ―2021年のワールドマスターズゲームズ関西には出場されますね。
 知事 水泳の平泳ぎだったら練習しなくて大丈夫だろう。とはいっても練習をしなくてはいけないが、今から鍛えなくても金メダルを狙っている訳ではないから。参加することに意義がある。