<5期目スタート・井戸敏三知事に聞く>
県民と共に活力あるふるさと兵庫を
兵庫ジャーナル 2017.0703wrote

  8月1日、井戸敏三知事による第5期県政がスタートした。来年7月12日には、第52代兵庫県知事として県政150年の節目を迎える。県政史上初の5選を果たした知事選では、基本姿勢である「参画と協働」の原点に返り、“新兵庫への挑戦”を掲げた。県民の夢や願いをもとに活力あるふるさと兵庫を築くと訴えるとともに、数値目標を盛り込んだ6本柱70項目の公約を打ち出した。これは、時代潮流を見据えた新たな兵庫づくりへの号砲であった。5期目の県政運営で、「新しい兵庫への確かな道筋をつけるため、県民とともにしなやかに、したたかに一歩ずつ歩みを進める」と宣言した。そこで、井戸知事に決意と抱負をインタビューした。

若者の夢を盛り込み「2030年の展望」を策定

 ―8月1日、5期目がスタートしました。
 井戸知事 職を引き続き担う責任の重さを痛感している。初心を忘れず、誠心誠意、県政運営に取り組み、県民の負託に応えていきたい。いま、人口減少と少子高齢化という経験したことのない変化に直面している。人口、経済の右肩上がりが期待できない中で、活力を保ち続ける地域を創る「地域創生」に挑んでいる。これを軌道に乗せ、時代に求められる新しい地域社会のモデルを兵庫の地から生み出す、これが新任期の目標だ。
 ―具体的には。
 井戸知事 知事選で掲げた公約を確実に具体化する。公約に対応する施策の目標と工程を示す新しい県政推進プログラムを今秋に策定する。新規の項目や現行施策の拡充は、予算編成に向けて検討を本格化する。
 ―地域創生への取り組みは。
 井戸知事 人口減少対策や地域創生は、ワンイシューではなく特効薬もない。ひとつに手を付ければ動いていくという課題ではない。様々な取り組みを地道に進めていく必要がある。地域の活力をいかに生み出すか、人口減少をどう阻止するか、このふたつはつながっている。人口減少対策は、子育て環境の整備と高齢者対策。特に在宅、つまり高齢者のケアのシステム化。3番目は県内就職の促進。特に事業所。起業とか、ものの知的生産。そんな企業をもっと誘致することが重要。つまり、ふるさとに戻るだけの魅力のある仕事でなければいけない。
 以前は働く場があればよかった。今は働く場があっても魅力がないと手を上げてくれない。
 ―行財政構造改革が総仕上げの段階です。
 井戸知事 最終2カ年行革プランに基づき、30年度の収支均衡の達成、組織、職員定数などに取り組み、30年度末をもって構造改革に区切りをつける。しかし、震災関連債の残高も4千億円弱残っており、これまでの改革を検証し、不断の見直しを続けていく。
 ―来年7月に県政150年の節目を迎えます。
 井戸知事 行革を成し遂げ、新しい兵庫の基盤をつくり、県民と共に未来を語り合い、兵庫づくりの目標となる「2030年の展望」を策定する。次代を担う若者の夢も盛り込み、県民とともに、具体化に着手する。
 ―地域創生のキーワードでもある市町との連携はいかがですか。
 井戸知事 これからは大きな成長が期待できず、財政的な余力が生まれる時代ではない。課題が難しくなり、県と市町が一つの方向を向いて臨むことが極めて大事だ。そして県と市町が、同化ではなく、役割分担して進めることが重要になる。例えば小野市の工業団地は、そういう発想で県市の役割を踏まえつつ進めようとしている。
 ―今後に具体的なアイデアは。
 井戸知事 県単独の地域創生の交付金を創れないか検討している。現在、県民局・センターが中心となって実施している「ふるさと創生推進事業」は使い道が硬直化し、最初のねらい通りにあまりなっておらず、規定事業化している。もう少し弾力的で地域住民を楽しく巻き込めるような事業展開ができる交付金事業として、県と市町の共同事業のニュアンスとなる仕掛けをつくりたい。国の交付金は若干使い勝手が悪い所がある。柔軟にカバーできる仕掛けにしたい。
 ―知事選について改めて感想を。
 井戸知事 知事候補は県民の代表であり、一部の地域だけで戦えばよいというものではない。隅々まで周って政策を訴える姿勢が必要だ。合併前のすべての市町に足を運ぶことを基本とした。
 ―県下を巡った印象は。
 井戸知事 兵庫の多様な魅力と可能性を再認識した。加えて地域の課題解決に取り組む県民と、その熱意を共感できた。また、道路や河川など地域づくりへの意欲を強く肌で感じ取ることができた。街頭演説で集まった方を見ると、新たに地域の中で仕事、生活している若い人が少ないという印象を受けた。小規模集落がこの11年で200ぐらい増え450に。小規模集落は高齢化率40%以上、50世帯以下の集落。郡部では世帯数より高齢化率が高い小規模集落が増えているケースが多い。
 ―得票は約94万5千票でしたね。
 井戸知事 百万票を目標としたが、届かなかった。「天の配剤」ともいうべき得票だったが、「残念な気持ちを持って、4年間をしっかりがんばれ。有頂天にならないで、しっかり県民と歩めよ」というサインだと思う。
 ―その一方で、各紙の調査では、県政への評価は高かったですね。
 井戸知事 県政については大変高い評価をいただいたが、支持率は下がった。このギャップは、これからやろうすることに対して説明力が足りず、十分理解されていなかったのではないか、と反省している。県広報のあり方について発信力を高める努力をしていきたい。
 ―戦術面での反省点を挙げておられました。
 井戸知事 特に、ネット選挙に対する対応力が欠けていた。ネット対策はフェイスブックぐらいで、ツイッターも1週間後に初めて使った。ネット選挙の重要性に初めて気付かされた。阪神間で近接した理由は、その影響ではないか。
 ―「気力、情熱をこれまで以上に」とのメッセージがありました。  井戸知事 選挙カーの走行距離は4135キロ。少なくとも知事選の候補者は選挙カーの助手席に乗って各地を回らないといけない。それをしっかりと果たした。
 ―陣営では危機感もありましたが、これには。
 井戸知事 阪神間でも選挙カーから手を振っていると、前回なかったような若い、乳幼児連れのお母さん方の反応が大変よかった。その意味で、結果は天の配剤といったが私の思いとは違った。だから残念といったのは本当のコメント。
 ―運動の重点化、力の配分も指摘されていました。
 井戸知事 総合的な作戦が組めてなかった。例えば朝立ちはたくさんの通勤者がいるところに立たなければいけない。朝立ちのなんたるかを理解した上で日程を組む必要がある。選挙戦術の総合化が欠けていたのかも。

街頭トーク百回を目標に
「対応」でなく「発想」を原点に

 ―県議会で議員提案による中小企業振興条例、県産木材利用促進条例が成立しました。
 井戸知事 県議会が政策条例を提案する動きは、議会活動の活性化の意味でも望ましいことだと思う。議員は有権者から直に具体的な悩みや要請を聞いている。生の声を反映することが議員の活動。一方、県は、どちらかというと各種団体を通じた意見が入って来ることが多い。意見調整を必ずやって、いい政策展開に結びつく議員提案条例になっていけば、情報の共有化と二元代表制の車がきちっと同じように動くと考えている。
 ―秋に知事選と連動する神戸市長選があります。
 井戸知事 新長田の合同庁舎など県市協調の事業が進んでいる。選挙戦術的には、ネット対策をしっかりやってほしい。もうひとつは東部3区で意外と接触不足があるのかもしれない。大阪通勤者が多いし、どう機会をつくって市民との情報交換、意見交換をするかが大事。
 ―関西広域連合の今後の方針は。
 井戸知事 東京一極集中を是正し、関西を極として双眼構造を創り出さなければ。広域事務の推進はかなり機能し、関西ワールドマスターズゲームズの準備も動いている。ただ国との関係では、なかなか機能していない。国との関係を打開するために広域行政のあり方研究会を設置する。世界の制度も含めて研究し、国に対してどのような提言をするか、広域連合の運営についても、原点に返って検討したい。
 ―先の全国知事会の岩手宣言の中で防災庁創設が盛り込まれました。
 井戸知事 是非入れてほしいと我々からお願いした。骨身にしみているのが事前防災の重要性。災害発生後の対応は政府自身早くなったし、我々も広域的支援が早くできるようになった。問題は、事前の防災対策をシナリオ化、或いは動員計画をつくること。さらには科学的な調査研究を踏まえた対策を用意する。そのような観点から防災の専門機関が必要との共通認識が全国知事会にある。
 ―提案されている中央集権制限法の見通しは。
 井戸知事 見通しは立っていない。中央省庁は冷ややか。自分たちの首を締める話だから。フランスのミッテランが大統領の時に同じような発想で法律をつくっている。そうでもしないと、国は役割を手放そうとはしないのでは。これも共通理解にする必要がある。
 ―5期目スタートに際して、職員の一致協力との言葉が加わりました。
 井戸知事 庁内自治といっていたのを一致協力との言葉にした。一人で仕事はできるものではない。職員には感覚を鋭くしてもらいたい。県民が何を求めているのか。求められているものに誠心誠意与えられた仕事をやるだけではなく、求められていることにアンテナを高くして感じとる。一度決めたことはしっかりやる。それも県民とともにやるという気持ちが大事。その期待を込めて一致協力との言葉にした。それがベースにあれば現場力、創意工夫も出てくるはず。
 ―新規採用職員辞令交付式で、県制度が将来残っているかどうか分からないといわれましたが。
 井戸知事 私が入省した昭和43年当時、大臣からもそういわれた。府県をまたぐ合併も議論していた。今の制度も将来どうなっているだろうか。
 ―統治機構を変えるということについては。
 井戸知事 憲法改正論議がスケジュールは別として、なされていくと思う。その時に我々が地方自治のあり方、国の統治機能のあり方に対して議論をしておかなければならない。国会の機能をどう考えるかともつながる。
 ―さわやか街頭トークを秋口から再スタートすると聞いています。
 井戸知事 また、やらないといけない。秋口だと政策が具体化していないかもしれないので、選挙演説と同じといわれないようにしたい。今、82回なので、100回以上は成し遂げる意欲で再開したい。
 ―健康管理は。
 井戸知事 相変わらず朝起きてから約1時間の体操を続けている。そのあとシャワーをあびる。
 ―アルコールは。
 井戸知事 歳なのでそれなりに落ちてきた。
 ―お孫さんは。
 井戸知事 お盆休みに東京にいくので、その時に会う。もう8カ月半だから、少しずつ反応が出てきていると思う。会うのが楽しみ。
 ―5期目は、全体を通してキーワードは原点ということになりますか。
 井戸知事 対応が原点に戻ると時代が違う。県民本位、現場主義、県民目線、参画と協働の発想が原点ということ。活力あるふるさと兵庫の実現を目標に、県民と共にしなやかに、したたかに一歩ずつ歩みを進める。