<兵庫県町村会が創立100周年>
記念シンポで「地方自治体の将来像」考える

2020.08.21

 県内12町でつくる県町村会の創立100周年を記念したシンポジウムが21日午後、県公館で開かれた。県、県内市町の首長や議員ら約130人が来場したほか、県のインターネット上の動画配信サイト「ひょうごチャンネル」でも同時配信され、地方自治体のこれからのあり方について、人口減少やポストコロナ社会への対応といった、社会の変化をふまえた国や県の直近のビジョンなどを交え、ともに考えた。
 同会は、町行政の円滑な運営と地方自治の振興発展をめざして、各種研修事業や調査研究、国や県への要望活動などに取り組んでいる。
 シンポジウムは、同会の創立100周年の節目を機に、今後のあり方を全国に先駆けて兵庫から発信しようと、県と同会の共催で開かれた。
 開会あいさつで、会長の庵逧典章佐用町長は「行政課題に対応しようと発足されてからこれまでに、行政はいくつもの試練に見舞われた。現在の豊かで安定した社会は、先人の努力と英知のもとに築かれたことを忘れてはならない」と改めて肝に銘じ、「住民の安全確保、福祉の向上、次世代の育成という地方行政の使命はいつの時代も変わらない。人口減少、少子高齢化などかつてない変化に直面した状況下でも果たしていける一助となれば」と開催意義を語った。
 続いて、地方公務員共済組合連合会の岡崎浩巳理事長が基調講演に立ち、高齢者人口がピークを迎える2040年頃を見据えた地方行政のあり方を審議する、第32次地方制度調査会が今年6月にとりまとめた答申を解説。人手など限られた資源の中でもサービスを提供できる手立てとして、都道府県による後方支援を併せた市町村間の広域連携の重要性が示されたことなどを説いた。
 続くパネルディスカッションでは、まず、事例発表が行われ、金澤副知事は、税務職員の市町間併任など県下の市町連携を紹介。「有効性があり、行政課題ごとに強化を図るべき。主体的な連携を積極的に支援していく」と県の姿勢を示した。
 高齢化率の高い島根県雲南市の速水雄一市長は、地域課題の解決や新たな価値の創造をめざす、子どもから企業を含む大人までの取り組みを積極的に支援していることを披露。ニーズと社会変動に応じたきめ細かい住民サービスにつながっていることを伝えた。
 また、岡山県西粟倉村の青木秀樹村長は、森林環境を活用した活動を紹介。適正管理から始まり、林業の6次産業化の実現やエネルギー資源としての利活用、ベンチャーの創出などにつながっていることから、「多様な主体が関わることで多様な価値が生まれる」と連携や交流の意義を説いた。
 次に、庵逧会長と岡崎氏、大阪大学大学院の北村亘教授を加えた6氏がパネルディスカッション。中で、「公」「共」「私」連携の重要性も強調され、岡崎氏は市町村に、「『共』と『私』へのコーディネート力の発揮が一層求められる」と自覚を促した。
 また、市町村連携について、北村氏は「連携前後で課題が生じた際に仲介する垂直補完の役割を」と都道府県のあり方を説いた。
 金澤副知事は「市町村は、基礎的自治体として自主自立にこだわる部分と、行政サービスの維持を最優先するために連携すべき部分の見極めを」と柔と剛を織り交ぜた運営を提唱した。
 最後に、庵逧会長は「町ごとに個性と理念を持ちつつ、12町で互いに連携・協力して課題解決に努める」と住民が誇れるまちづくりへの決意を新たにし、引き続いての理解と力添えを求めた。