<新型コロナ「緊急事態宣言」延長>
現場の生の声を感染症対策に

2020.05.11

 新型コロナウイルス「緊急事態宣言」が5月31日まで延長された。4日、井戸知事は県民、事業者へのメッセージを発信、「すでに多くの協力をいただいているが、『接触機会の8割削減』に向け協力を」と、外出自粛の徹底、府県域を越えた移動等の自粛、公園、スーパー、商店街等での「密」の回避などを求めた。

 4月7日に緊急事態宣言が発令されて以降も、県内の感染者は増加し、県は外出自粛を強く呼びかけるとともに、一部事業者に15日からの休業を要請した。
 さらに、感染拡大の防止、甚大な影響を受けている事業者を支援するため、国の補正予算による財源措置等を活用した補正予算を編成。24日、臨時議会を招集した。
 補正予算は、①感染拡大防止対策の強化と医療・検査体制の充実②地域産業・県民生活への支援③収束後における地域の元気づくりを柱とし、総額で3916億3300万円にのぼる。
 臨時議会の質疑では、自民、県民連合、公明、維新、共産5会派の代表、無所属2議員が登壇。医療・検査体制の充実などとともに、休業要請を行った事業者への支援金について、対象外となる面積100平方メートル以下で、自主的に休業している事業者にも同様の支援を求める意見が相次いだ。
 審議の結果、原案通り可決したが、自民、県民連合、公明の3会派は同日夜にも井戸知事に対して、対象事業者の拡充を申し入れた。
 週明け後の27日、井戸知事は6日までの大型連休の間、100平方メートル以下の学習塾、商業施設(生活必需物資の小売関係等以外の店舗)等に対しても休業要請を行い、支援金を給付することを発表した。
 翌28日には各会派、無所属議員が知事への緊急要望を行った。出席した金澤副知事に緊急事態の長期化を見据え、医療・福祉現場、学校休業中の子どもを抱える保護者の声などを伝え、迅速、きめ細かな対応を求めた。
 金澤副知事は「現場こそが第一。支援金の追加、拡大措置も議会から生の声を聞いたからこそ。議会から情報をしっかりいただき対応する」と課題を共有し、施策展開することを約束した。

 24日、第348回臨時県議会の冒頭、長岡壯壽議長は「多くの方々の努力、県民の自粛要請への協力に報いるため、十分な審議により補正予算をより良いものにし、一日も早く県民に届ける」と議員の責務を強調。そして、全県職員の尽力に感謝の意を述べ、「『真っ暗だからこそ、見える光がある』と羽生結弦さんが発信された。前に進めば終わりに近づく。一日も早い収束を」と訴えた。
 続いて補正予算案の提案説明に立った井戸知事は、「県民の生命を守るための新型コロナウイルス感染症対策。阪神・淡路大震災を乗り越えてきた本県だからこそ、県民と一体となって立ち向かう」と表明した。
 質疑では自民・大豊康臣、県民連合・木戸さだかず、公明・坪井謙治、維新・高橋みつひろ、共産・きだ結、無所属・丸尾牧、中島かおりの7議員が登壇した。
 大豊議員は、「県民と危機感を共有してもらいたい。この補正予算は知事の思いを伝える県民へのメッセージになる」と呼びかけ、中小企業の運転資金の確保対策などについて質した。
 井戸知事は、事業概要を説明し、「速やかに執行し、効果が早期に発現できるよう一丸となって取り組む」と基本姿勢を示した。
 中小企業対策について、谷口産業労働部長は「2月以降、融資制度の拡充を図り、4つの支援資金を創設したものの相談は絶えない。このため、今回、新型コロナウイルス感染症対応無利子資金を創設する。1兆円の過去に例のない額を確保した。最後の砦としての責務を果たすべく機敏に対応する」と訴えた。
 木戸、坪井両議員は、県民に正確で分かりやすい情報提供を要請。井戸知事は外出自粛の効果など、情報発信に努力していることを説明し、「さらに工夫を重ねる」と応じた。
 さらに木戸議員は「マスク、防護服などの医療資材の確保状況と医療現場での供給状況にギャップが生じている」と問題視。藪本健康福祉部長は「丁寧な必要量調査を行う」とした。
 坪井議員は中小企業への支援で、スピーディな融資の実行を要請。谷口産業労働部長は「手続きの迅速化が不可欠。ワンストップ・ステーション化も進みつつある」と答えた。
 検査体制の充実では、高橋議員がドライブスルー検査を、きだ議員が東京などで設置されているPCR検査センターの開設を求めた。
 藪本部長は、「利点はあるが、処理能力に限界があり、その充実の上で検討する」と現状を伝えた。

 28日、各会派の緊急要望。自民は、「県民向けのマスク等衛生資材の確保へ、特命部署の設置」「休業事業者に対し、店舗への家賃支援」「休校に伴う学習環境の整備」「終息後を見据えた新たな社会デザインの検討」などを求めた。
 内藤兵衛幹事長は「所属する44議員が、さまざまな県民の声を聞いている。要望内容も刻々と変わる中、これを整理し、応えていかなければならない」、春名哲夫政調会長は「一致団結して乗り越えないと将来はない。県民の生命、生活、経済を守る取り組みを」と現状認識を伝え、事業化を要請した。
 議員からは、現場の実情に対応したマスク等の供給、農家や介護など最前線で努力を続ける人たちへの支援、事業者からの相談窓口となっている商工会への専門家派遣などを求める意見があった。
 県民連合は、融資手続きの簡素化、労働安全衛生の確保、休業要請業種へのきめ細かな支援、人権擁護の取り組み、県・市町職員の健康管理・士気の保持などを要望した。
 公明は、生活福祉資金の利便性向上などをはじめ、特殊詐欺対策、自然災害と感染症の複合型災害を想定した避難体制のあり方の検討を求めた。
 維新は自衛隊との連携や軽症者対策の強化などを要請した。
 共産は個別の事業とともに、「高速道路の新設などの予算を組み替えて、県独自で最大規模の予算出動を行うべき」と主張した。
 また、各派とも休業事業者支援金の対象拡大を評価。金澤副知事は財政規模が拡大することについて「必要ならば補正予算を組む」との考えを示した。
 意見交換の中では、公明と維新が、学校の「9月入学」の検討を国に要請するよう促した。
 さらに、金澤副知事が「新型コロナで都市への人口集中の問題点がさらに明らかになった。地方分散の取り組みについても次の長期ビジョンの検討の中で訴えたい」とポストコロナ社会について言及する場面もあった。