<兵庫で近畿地方治水大会 2府5県が決議>
「事前防災」の治水事業 国に要請

2019.10.24

 水害から国民の命と財産を守る治水事業の推進をめざして、令和元年度近畿地方治水大会が10月24日午後、神戸市中央区の兵庫県看護協会ハーモニーホールで開かれた。近畿2府4県と福井県の市町村長や市町村議会議長、府県および市町村職員など447人が参加、意見発表などで治水事業の重要性を再確認し、「事前防災対策」として強力な推進を国に求めることを決議した。毎年、近畿2府4県と福井県の7府県の持ち回りで実施されており、今回は兵庫県などの主催で開かれた。
 大会は県治水・防災協会会長の仲田一彦三木市長を座長に進行。まず、井戸知事が「事前対策が防災・減災に大きな効果をもたらす。豪雨による水害が頻発する中、危機感をもって臨み、国にもしっかり訴えたい」と治水事業の必要性を強調し、団結を呼びかけた。
 続いて、3自治体の代表が意見発表を行った。宍粟市の福元晶三市長は、引原ダム再生事業を説明し、「洪水調節能力を向上し、引原川と揖保川流域全体の治水安全度を高めるとともに、観光資源としても積極的に活用していく」と姿勢を示した。
 県下最大の河川、加古川を有する加東市の安田正義市長は、河川改修事業で築堤や掘削などを進めた結果、浸水被害が減少したことなど効果を報告、「国は河川整備を強力に推進すべき」と訴えた。
 二大河川に挟まれ、洪水ハザードマップで町全域の水没が予測される京都府久御山町の信貴康孝町長は、排水機場や調整池の建設などを組み合わせた対策を紹介。その上で「治水なくして町の隆盛はない。国の防災・減災・国土強靱化緊急対策は実効性ある予算。実施期間終了後の予算獲得へともに尽力を」と協力を求めた。
 続いて、国土交通省の職員が国全体や近畿地方における国の治水事業を報告。水害の激甚化を指摘し、「今後の治水のあり方を考える時にきている」と危機感を示した。
 このあと、同協会副会長の石井登志郎西宮市長が、防災・減災・国土強靭化緊急対策事業の事業期間延長や、南海トラフ巨大地震を見据えた地震・津波浸水対策の着実な推進、「事前防災対策」としての河川やダムなどの整備の強力な推進などを国や政府に強く要望することを盛り込んだ大会決議案を読み上げ、満場一致で採択された。
 また、大会の前には、京都大学大学院の立川康人教授が気候変動による水害リスクについて講演。地球温暖化に伴う大規模洪水への備えの必要性を指摘し、人命と社会経済両面の防災・減災へ、ダムなど治水施設の徹底利用と、そのための技術開発の推進を訴えた。