維新の圧勝劇―郡部にも浸透
参院選兵庫選挙区を振り返る

2019.07.22

 安倍政権6年半の評価を問う第25回参院選挙が終わった。全国的に自民57、公明14議席、合計71議席で与党は改選議席の過半数を確保。野党が統一候補を立てた32の1人区は自民が22勝10敗となった。兵庫選挙区では、維新が大阪ダブル選以来の勢いを示し、公明は組織総動員の成果を見せた。一方、序盤で優位が伝えられた自民は、比例区票から17万票強が目減りするなど薄氷の議席死守となった。後半猛迫した立民は一歩及ばず、共産は20万票を大きく割り込んだ。(文中敬称略)
 A 投票率が48・60%となる中で、最激戦区と称された兵庫選挙区は、前半と後半で、各陣営が戸惑うほど戦況が一変、「過去に経験のない展開」との声も聞かれた構図に。情勢を反映して、党首クラスが連日、来県、立民枝野代表は、神戸で選挙戦を締め括った。それなりの手ごたえを感じていたのだろう。
 B 当日の出口調査では、共通して維新清水が終始リード、順位にばらつきがあるが、残る2議席を公明高橋と自民加田、立民安田が争う大混戦模様を呈した。
 C いわゆる"ゼロ当"となった維新清水。唯一の現職の知名度、大阪ダブル選以来の勢いそのままに安定、いち早く抜け出した。西宮で2位に2万3千票差をつけ圧倒するなど阪神間の強さは際立っていた。
 D 清水陣営では、公示前の公明高橋の5千人集会について「怖くない」と一蹴し自信を示していた。都市部以外に全県で支持を広げたことは、他党にとって今後の脅威として印象付けた。
 A これを支えたのは自民支持層だ。大阪ダブル選でも自民支持層の6割以上が維新に投票したとされたが、兵庫でも同様の構図ができつつある。
 B 自民加田は、3位で辛うじて議席を死守したが、事前情勢調査で「安定」「先行」と伝えられていただけに、当選が決まるまで陣営は顔色なしだった。逆アナウンス効果が出たといえる。比例区得票から約17万票が他党へ流れたのは致命傷にならずによかった。
 A 加田には、期間中に二階幹事長、岸田政調会長の党2役が揃い踏みでテコ入れした。しかし、期日前の出口調査でも伸び悩みが指摘され、終盤には危機感も出ていた。次期衆院選に向けては、公明との選挙協力のあり様を含めて検証、早急な立て直しが求められる。
 D 最重点区と位置づけ、山口代表が再三来援した公明高橋は、当初、独自調査で4位としきりに喧伝していた。危機感を募らせ、全国の創価学会員を動員した必死の活動に舌を巻いた人は少なくない。
 C 立民安田の後半の巻き返しには目を見張った。落下傘で、連合組織外候補のハンデ、エネルギー政策に対して連合傘下の組合でもばらつきがあっただけに、「出遅れが痛かった」との感想もうなずける。
 B 安田が、南但馬、丹波の4市でトップを奪ったのは驚いた。共産金田は、20万票を割り込み、回復基調に乗せられなかった。野党共闘などが兵庫ではプラスに働かなかった。
 A いずれにしても、維新の躍進は今後の県政界に大きく影響を及ぼすことは確かで、さらに警戒感を増すことになる。衆院選や首長選などに向けて対応を見守る必要がある。